日本から米国に企業が進出する際に、どこでも悩むのが人材雇用の問題です。
今回は海外の人材雇用でいつもつきまとうビザの問題について、アメリカの事情をお伝えしたいと思います。
米国(あるいは北米)に進出しようとしているのですから、もちろん現地の人材を雇用しながらビジネスを進めていくことになります。ビジネスに人の問題がつきまとうことは周知のことですが、やはり海外に初めて進出する際に文化や言語の異なる現地人を雇うことはなかなか難易度の高いことです。
結果的に、多くの場合日本の社長、あるいは英語のできる人材(このパターンが多い)か、海外営業に特化して国内で採用された人材を責任者として海外の新拠点に責任者として派遣することが度々あります。
しかし、米国で外国人が就労するためにはビザ(査証)が必要になります。このビザ申請は企業単位で行うのですが、ビザによってはアメリカでまずビジネスをそれなりに回すことが要求されます。しかし、営業責任者が不在の環境では売上を上げるというのも難しく、まさに「にわとりと卵」の状況が起こることがよくあります。
下記にアメリカで用いられる就労用ビザの代表的なものを紹介します。
H-1Bビザ
専門職に従事する人材のためのビザ(要大卒)
E-1ビザ
米国と通商条約を結んでいる国の貿易業者用ビザE-2ビザ
米国と通商条約を結んでいる国の投資家用ビザL-1ビザ 多国籍企業の派遣社員(大企業向き)
B-1ビザ 商用あるいは韓国を目的とした短期滞在者
H-1ビザ (専門職用ビザ)一般的にアメリカで働くために利用されるビザはH-1ビザと呼ばれるものです。
しかし、このビザの取得には大卒の資格が必要とされ、職種と専攻がマッチしている可能性があります。留学生が現地でそのまま就職する場合には、このビザがよく用いられますがこれは日本から派遣される人材にはあまり適していません。(就労開始時期が10月1日と決められていることなど、制約もあります)
E-1とE-2ビザ 通商ビザ(貿易業者/投資家ビザ)一方E-1ビザとE-2ビザは「ミニ永住権」と言われるほど優遇されたビザで有名です。一般的に5年発給され、企業が存続する限りはほぼ無期限に更新できます。(会社の情報などを定期的に当局に対して更新する必要があります)E-1ビザは日米の会社間で米国子会社の仕入れの50%以上の取引が発生することが前提とされますので、製造メーカーなどが米国に販売拠点を利用する際などに便利です。
一方E-2ビザはそのような制限がないので、サービス業やその他の業種の会社に用いることができます。一般的には投資に対するガイドラインが儲けられており、ビザを申請する際に米国拠点がそれなりに立ち上げられ、商流が確立されお金がそれなりに流れていることが前提条件となります。また、E-1もE-2も基本的には管理職の人材に対して発給されるビザであることも留意しておく必要があります。
L-1ビザ (多国籍企業駐在員ビザ)L-1ビザは、別名Intra-company Transferee Visa と呼ばれ、主に大きな規模でビジネスを世界に展開している多国籍企業が、米国内の子会社、親会社或いは傍系会社に経営管理者や特殊知識を有する社員を派遣する際に利用されるビザです。また、Eビザと異なる点が、このビザは「駐在員」のためのビザであることです。ビザの対象となる社員は申請直前の3年間のうち最低1年間は、派遣される元の(日本)企業あるいはその関連企業の従業員として、役員・管理職あるいは特殊知識職のいずれかとして雇用されている必要があります。
B-1ビザ (短期商用ビザ)B-1ビザは、出張や会議への出席など、ビジネスの立ち上げを主目的として、短期間、米国を訪問する者に発給されるビザです。(ちなみに現在、日本人が米国を90日以内の短期間訪問する場合は、一部の例外を除いて、特別にビザの申請をする必要はありません)
このビザでは毎回最長六ヶ月間しか滞在することができないのでご注意ください。
上記以外にも永住権(通称グリーンカード)申請という方法もあります。米国に永住を希望する者も多いので、企業の永住権スポンサーは雇用者に対するインセンティブにつながることもあります。ビザの申請には予想外に時間がかかることもありますので、申請前に事業プランを立ち上げる際にある程度中に盛り込んでおくことが重要です。なぜなら派遣する予定の代表者のビザの発給が遅れることで、事業展開そのものが遅れてしまうということも十分にありうるからです。手続きを誤り、ビザの発給が拒否されたりすると遅延するだけでなく、費用面でもロスが増えてしまいます。
アメリカではビザ以外にも人事面でも日本と大きく異なる点があり、注意が必要です。これらの点については、また機会を改めてブログでお話ししていきたいと思います。
*このブログは法律的な助言をするものではありません。実際のビザ申請の際には信頼のおける移民弁護士を通してご相談の上、申請手続きをされることをお薦めいたします。