SUSHI、TOFU、SAKE、 日本を支えてきた食文化が健康食、あるいは美食として世界で高い評価を得ていることはこれらの英単語が一般的なものとして認知されていることからも伺えます。SUSHIブームはハリウッドのセレブたちの間でヘルシーだとして話題になったことがブームの火付け役になったと言われています。
SUSHIブームはその後かなり浸透してきて、最近では
WHOLE FOODSなどの高級オーガニック食料品店でもパック入りの寿司が販売されるようになってきました。巷にもSUSHI の看板を出したレストランが多く溢れていますが、その多くは韓国人や中国人によって経営されているお店であり、肝心の日本人が経営しているお店はまだまだ全体的には少なく、プレミアム感があります。
アメリカの中でも特に日本人や日系人が多いロサンゼルスでは、このような食のトレンドが全米一早い感じがします。最近のトレンドはずばりラーメンです。トヨタやホンダ、全日空といった日系大企業の本社が密集するトーランス、そのお隣のガーデナ市などを含むLA群南方の地域は俗にサウスベイと呼ばれ、最近では多くのラーメン屋がひしめきあい、さながらラーメン戦争の様相を呈しています。
中には中村屋のように日本でも有名な店舗が進出してきていることもあり、当地では話題になります。ロサンゼルスには
ライトハウスやhttp://www.lalalausa.com/というフリーペーパーがあるのですが、最近では広告だけでなく
ラーメン屋特集などが組まれることもしばしば。
私たちはここから何を学ぶべきでしょうか。
海外の市場に進出する際に大きな敵となるのは実は、市場そのものではなく、進出する側の市場に対する「既成概念」であるということがコンサルタントの間ではしばしば話題になります。
例えば、ここでお話しているラーメンの場合も同様でした。というのも、もともとアメリカ人は熱い麺を食べないとか、舌を火傷した客から訴えられるなどというリスクのほうばかりが懸念されていたので、なかなか日系の本格的なラーメンビジネスの進出は成功してきませんでした。
確かに訴訟王国のアメリカでは日本人の神経からすると考えられないような訴訟の例が実在します。例えば、某大手ハンバーガーチェーンのコーヒーが熱かったといって、訴訟に発展したケースなどは特に有名です。しかし最近ではそうした一見理不尽に見える訴訟は影を潜めてきています。ようやく「常識」が浸透したのかと、私なんかは思ってしまいますが、結局世界中の半分以上を占めるほどいると言われている弁護士ばかりが儲かるのだということに気づいた人が増えてきたのかも知れません。
そういうわけで、いざラーメン屋が出始めてくると意外にアメリカ人のお客さんが多く、恐れられていたような訴訟の例なども見当たりません。そして、その結果もともとラーメンのような「ヌードルスープ」を食べる習慣のあった中国系やベトナム系はさておき、白人や黒人もおいしいラーメンに舌づつみを打つような光景をよく目にするようになりました。中にはラーメンのお持ち帰り(To GoあるいはTake out)をする人などもいて、驚かされることがあります。よく考えてみると、即席カップ麺で有名な日清(アメリカでは
NISSHIN)の代表製品であるカップヌードルもビーチなどでよく見かけられたのです。
ところで最近同社はインドにも本格参入したとされています。インドにはもともと麺を食べる文化がなかったので、それが逆に効を奏したとされています。マーケティングを学ぶ際に、アフリカに靴を売りに行った営業マンの話をお聞きになったことはないでしょうか?それを見て、落胆した営業マンと、100%の市場可能性があると歓喜した営業マンがいたという話は未知の市場に対する「既成概念」との取り組みについて、大切な教訓を私たちに教えてくれます。
前置きの方が長くなってしまいましたが、この次に来るのは何かと最近こちらで話題になっているのがお好み焼き屋さんなのです。実はJapanese Pizzaなどと呼ばれるお好み焼きはもともと、野菜嗜好で健康的、安価でありアメリカを代表するファーストフードであるピザと同じ感覚で食することができるなど、アメリカでの成功の可能性が高いと噂されていました。しかし、熱い鉄板を使うということで、ラーメンよりも更に敷居が高かったのか、関西人が多く住むロサンゼルスにさえごくわずかしかお店が存在しませんでした。それが今年に入って少しずつ数を増やしています。
鉄板をアレンジして、店内で調理したものをアツアツで出しています。
そして、いよいよ俳優の伊原剛志さんが運営する「ごっつい」というお好み焼きチェーンがウエストロサンゼルスにオープンしました。
寿司文化が流行った時にはわさびや醤油といった周辺の食品もブームに便乗して売上を伸ばしました。寿司ブーム自体、アメリカで苦戦していた醤油メーカーがかなり後押しをしてしかけたブームだと言われているほどです。このような新しいブームを見極める際には、周辺産業が盛り上がるということも十分に加味しておく必要があるでしょう。