皆さんは TED という言葉をご存知でしょうか?といっても、これは米大手航空会社ユナイテッド航空のニックネームではありません。(そちらもTEDなんですが)
TEDというのはTechnology Entertainment Design の略語で、それらをテーマにしたスピーチフォーラムです。TEDは非営利団体によって運営されていて、スピーチや会合を通して優秀なアイデアを世界に広め、啓蒙し人々をつなげる活動を行っています。運営しているThe Sapling Foundationの創設者はクリス・アンダーソン氏。
TEDの看板イベントであるTED Talkは毎年一回主にカリフォルニア州のロングビーチで開催されます。"Ideas Worth Spreading" (拡散するにふさわしいアイデア)というテーマをもとに、スピーカーが規定された短い時間(5〜18分)で質の高いプレゼンを行います。フォーマットは特に規定されておらず、エンターテイナーが出た場合は音楽を演奏したり、ダンスパフォーマンスなどを披露したりということもあります。
スピーチフォーラムと聞いてもピンと来ない方が多いかも知れませんが、これはただのスピーチというよりも視覚的・聴覚的な要素がかなり入ったプレゼンで聴衆も退屈することなく聴き入ることができます。
TEDのBrain Trust(相談役)にはGoogleの両創業者やアマゾンCEOのジェフ・ベゾスなども名を連ねており、過去のスピーカーにはスティーブジョブズやビルゲイツ、アル・ゴア、ボノ(U2)などといった世界的な著名人が含まれていて、彼らはTEDのビジョンとコンセプトに共鳴して、無償でステージに立ちます。
TEDのプレゼンはスピーカーのレベルもさることながら、その質が非常に高いことで有名です。これらは動画共有サイトのYouTubeでほぼすべて公開されていますので誰でも閲覧することができます。観客は数千ドルという高額の寄付をして、その席を得るのですから聴き入る姿勢も真剣そのものです。今年のTED Talkでは日本人としては初めて脳科学者の茂木健一郎氏がスピーチをして話題になりました。
TED 公式サイト
日本語に翻訳されたコンテンツは下記のリンクにまとめられています。
TED Talks in 日本語実はこのTEDには本体のTED TALKとは別のTEDxという独立系のイベントがあります。これらはそれぞれ別のテーマで、独立して運営されるイベントです。本体のTED Talkに触発されて、世界中には数多くのTEDx系イベントが存在します。日本でも4年程前から、二人のアメリカ人のキュレーターによって、TEDxTOKYOというイベントが開催されてきています。私も2010年のTEDxTOKYOには聴衆として参席しました。今年のTEDxTOKYOは6月30日に開催されることがすでにアナウンスされています。
最近では日本でも社会起業家やノマドワーカーという言葉が若者の間で浸透してきているようです。これまでは成功というとどうしてもお金持ちというイメージがつきまといましたが、最近では世界を変革しようとするビジョンを支える動きが大きいように思います。このような潮流を生み出した一つのムーブメントがこのTEDであり、TED関連のビデオはハーバードなどのアメリカ有名大学の授業よりも価値があると評価する向きも大きいほどです。
また聴衆も耳が肥えているので、ちょっとやそっとのプレゼンでは拍手喝采という状況にならず、最大級の賛辞とされているスタンディング・オベーション(総立ちの拍手喝采)を得られるスピーカーは稀で、最大の栄誉だとされています。
最近ではフェイスブックやグーグルの創業者、一昔前ではビル・ゲイツやスティーブジョブズといった大起業家が世界的な大成功を収めたのは、彼らに世界を変えようという強い動きがあったからだと思います。TEDによって、人々は崇高なビジョンが何であるのかということについて、何となく共通の理解を示してきているようです。逆に言えば、世界に進出するビジネスモデルを思い描こうとした際には、TEDのスピーカーに負けないような大きなビジョンをもっているものでないと難しくなっているのかも知れません。素晴らしい講演がいくつも上がっていますので、ぜひ一つか二つご覧になって頂きたいと思います。
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